(平成30年1月22日訓令第1号)
 (前文)
 オオサンショウウオ(Andrias japonicus)は日本の固有種で世界最大の両生類です。その形態が3,000万年前からほとんど変化していないことから「生きた化石」と呼ばれています。学術的な重要性が高いため、昭和27年(1952年)に特別天然記念物に指定されました。また、ワシントン条約(CITES)で商業目的の国際取引が禁止されています。
 日南町は、町内各地でオオサンショウウオの生息が確認されている全国有数の生息地です。とりわけ、自然河岸が多く残る日野川源流域では、本種が多く生息し、本種の継続的な繁殖も確認されています。また、オオサンショウウオは、特別天然記念物として貴重であるだけでなく、河川生態系における食物連鎖の頂点に位置する生き物としても重要です。
 しかし、オオサンショウウオの生息環境は、河川整備事業や社会資本整備事業により、町内全域で悪化の一途をたどっています。人工護岸は、身を潜める間隙や産卵場所を減少させ、ダムやえん堤などの河川構造物は、個体の移動を妨げています。このような河川環境の悪化は、オオサンショウウオの餌となる生き物も減少させています。また、全国的には外来種との交雑や違法な捕獲も発生しています。
 オオサンショウウオの生息環境が全国的に悪化するなかで、国のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類、鳥取県でも絶滅危惧Ⅱ類に選定されました。これらのランクは、差し迫った絶滅の危機にあるという評価ではありませんが、現在の状態をもたらした要因が引き続き作用する場合、絶滅の危機に瀕するという評価です。
 オオサンショウウオのように寿命が長い生き物では、生息環境の悪化による影響が表面化するまでに時間がかかることが考えられます。現在、町内には多くのオオサンショウウオが生息していますが、これは、かつての豊かな河川環境の名残かもしれません。
 コウノトリやトキの例で明らかなように、野生絶滅してしまった生き物の再導入には多大なコストがかかるだけでなく、その生き物が野生絶滅する前と同じ生態系を復元することは不可能です。以上のことから、オオサンショウウオを保全するための取組は、個体数が多い間に始めることが重要です。
 オオサンショウウオを保全するためには、産卵が行われ、孵化した幼生が成長、性成熟をして繁殖に参加する一連の営為を繰り返すことができる河川環境を残していくことが重要です。一方で、人が暮らしていくためにも河川整備事業等をなくすことはできません。
 このような状況で人とオオサンショウウオが共存していくためには、重要度の高い生息環境を保全すると同時に、河川整備事業等が本種に与える影響をモニタリングし、施工の改善につなげていくことが必要です。しかし、現状は、河川整備事業等がオオサンショウウオに与える影響のモニタリングすらできる状態ではありません。
 そこで、本町は、生き物を保全するためには、その生息状況を把握することが極めて重要であることに鑑み、国、鳥取県及びオオサンショウウオの保全に係る方々と連携して、本種の個体識別と捕獲記録の収集を実施するために必要な事項を定めることにより、町内における本種の生息状況(個体数、齢構成、繁殖の状態など)の把握を推進し、本種の保全対策を実施するための基礎資料を整備することを目的として、この制度を制定します。
(目的)
(定義)
(町の責務)
(個体登録の実施)
(指導員の任命及び役割)
(個体登録の使用機材及び手順)
(緊急保護された個体の扱い)
(現状変更申請への対応)