○桐生市の誇りである繊維産業を応援する条例
(平成30年3月23日条例第23号)
桐生市における織物の起こりは古く、奈良時代の初め西暦714年(和銅7年)に絹織物を朝廷に納めたことが続日本紀(しょくにほんぎ)に記されている。「関ヶ原の戦い」では徳川家康の軍旗として大量の織物を僅かな期間で織り上げ、桐生織物の名声はより高いものとなった。江戸時代には「西の西陣、東の桐生」とうたわれ、明治以降においては手織りから高度な機械織りへの移行を経て、桐生市は世界屈指の織都として全盛期を迎えた。昭和中期以降においては海外からの安価品の流入に加え、国民の和装離れも拍車を掛けて織物産業は縮小傾向にあるが、桐生市は現在でもデザイン、撚糸、染め、織、刺しゅう、縫製など繊維に関する全ての工程の技術が集積した全国有数の繊維産地である。
桐生市の伝統産業に関する文化の象徴として着物が挙げられるが、市民の中でも着物を着る機会は減少傾向にあり、特別な日に身に着ける衣服としてだけでなく、織物の繁栄を今に伝えるノコギリ屋根工場などの町並みを生かした着物の似合うまちづくりを推進することにより、日常的に着物を着る機会が増加していくことが望まれる。
私たちは、桐生市の発展を支えた伝統産業を尊重し、織物に代表される繊維産業の文化を守るとともに、伝統産業を積極的に活用する習慣を広め、次の世代に継承していくため、この条例を制定する。
(目的)
第1条
この条例は、本市の伝統産業である繊維産業の魅力を国内外に効果的に発信するとともに、地域の文化及び歴史並びに繊維産業との関わりを次世代に伝えるなどの施策を推進することにより、繊維産業の振興及び地域文化の発展(以下「繊維産業の振興等」という。)に寄与することを目的とする。
(市の責務)
第2条
市は、この条例の目的を達成するために、事業者等の自主的な取組を尊重するとともに、必要な施策を総合的に実施するものとする。
2
前項の場合において、市は、地域の実情及び事業者の実態を把握するとともに、関係団体、市民、議会及び議員と協力して、効果的に施策を実施するものとする。
(事業者及び関係団体の役割)
第3条
事業者及び関係団体は、自主的に繊維産業の魅力の発信に取り組むものとする。
2
事業者及び関係団体は、市等が実施する施策及び取組に協力するよう努めるものとする。
(市民の役割)
第4条
市民は、繊維産業及び繊維製品等(本市の地域で企画され、又は製造されるものをいう。以下同じ。)への理解を深め、市等が実施する施策及び取組に協力するよう努めるものとする。
(議会及び議員の役割)
第5条
議会は、市の執行状況を監視し、及び評価するとともに、必要に応じ、政策提言に努めるものとする。
2
議員は、繊維製品等を率先して身に着けること等により、繊維産業の振興等に努めるものとする。
(施策の基本方針)
第6条
市は、繊維産業の振興等を推進するに当たって、次に掲げる事項を基本として、総合的かつ効果的に施策を実施するものとする。
(1)
産業観光等を通じて、繊維産業の魅力を発信し、活性化につなげること。
(2)
地域における繊維産業の歴史及び文化について、次世代に伝えること。
(3)
繊維産業に係る技術の伝承を含めた人材育成を図ること。
(4)
繊維産業の振興等に関するイベント等を積極的に開催し、文化等の振興を図ること。
(5)
日常生活においても着物を着る習慣を広め、伝統文化の理解を深めること。
(市民等意見の反映)
第7条
市は、繊維産業の振興等に関する施策を実施するときは、市民等の意見を反映するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第8条
市は、繊維産業の振興等に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第9条
この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
この条例は、平成30年4月1日から施行する。